学会発表や論文投稿で、
「この図は自分で描くべきか」
「AIを使えば十分なのか」
「どこからプロへ依頼するべきなのか」
と悩む医師・研究者は少なくありません。
近年は生成AIやデザインツールの発展により、Figure制作そのもののハードルは大きく下がりました。
一方で、
- 解剖が破綻する
- 情報整理が難しい
- 図全体の統一感が出ない
- 査読者視点で成立しない
といった課題から、「結局どこまで自分でやるべきなのか」が分かりにくくなっています。
本記事では、日本医科大学形成外科の小野真平先生の記事をきっかけに、
「医師が安全に自作できる範囲」そして、「AI・プロ依頼との境界線」について整理します。
【LifeHack】学会発表や論文で使えるメディカルイラストレーションの描き方
小野真平先生が示す「医師自身が描く」という価値
小野真平先生は、Keynoteを活用したメディカルイラスト制作について、非常に実践的な記事を公開されています。
記事では、
- 写真をトレースして描く方法
- シンプルな構造の描写
- 図の統一感の出し方
- 著作権への配慮
- 複雑な図はプロへ依頼する考え方
などが丁寧に整理されています。
特に重要なのは、
「医師が安全に・最低限のレベルで図を自作する」
という視点です。
これは単なる「絵の描き方」ではなく、
研究内容を自分自身で整理し、伝えるための基礎力として非常に価値があります。
MEDICAL FIG.としても、この“自作文化”を健全に広げる考え方は非常に重要だと感じています。
医師が“安全に”自作しやすいFigureとは?
実際に、医師自身が比較的安全に自作しやすいのは、次のようなケースです。
- 単純な概念図
- 一つの器具や手技の簡易説明
- 外来説明用の模式図
- 単一構造のイラスト(耳・手・骨など)
- 情報量の少ないシンプルな図
これらは、
- 情報構造が比較的単純
- 解釈の揺れが少ない
- 読者側の認知負荷が低い
という特徴があります。
つまり、
「自分で内容を完全に把握・制御できる範囲」
とも言えます。
AIに頼む場合も、「自分で理解できる範囲」が重要
近年は、まずAIでFigureを作成してみる研究者も増えています。
実際、ラフ作成やアイデア整理の段階では、画像生成AIは非常に便利です。
一方で、現在の学術論文では、
- AI生成の扱い
- 責任主体
- 出典や再現性
- 画像の妥当性
について、ジャーナル側も模索が続いています。
特に論文Figureでは、
- なぜその構造になったのか
- どの情報を強調したのか
- 解剖学的に正しいのか
を説明できることが重要です。
その意味で、
医師がAIを使う際も、
“自分で理解・検証できる範囲”
を超えないことが、一つの安全ラインになります。
「3回プロンプトを変えても近づかない」は一つの判断基準
最近MEDICAL FIG.では、
「AIで論文図を作ってみたが、うまくいかなかった」
という相談が増えています。
多くは、
- 解剖が崩れる
- 細部調整ができない
- 色や構造が安定しない
- 図全体の統一感が出ない
といった理由です。
そこで、実務上の一つの目安として、次の基準をご提案しています。
「プロンプトを3回変えても理想に近づかない場合、その図はAIの守備範囲を超えている」
これは非常に実感に近いラインです。
そもそもAIへ依頼した時点で、「自作では難しい」という認識があるはずです。
そのうえで複数回試しても構造が安定しない場合、
そこには、
- 情報整理
- 構造設計
- 視覚翻訳
といった、単なる画像生成以上の課題が存在しています。
医師の努力だけでは難しいFigureもある
一方で、MEDICAL FIG.へご相談いただく案件は、より高い設計精度が求められるケースが多くあります。
例えば、
- 査読指摘に耐える精密解剖図
- 実験・病理・画像診断・時系列を統合したレビュー図
- Grant申請用の研究構想図
- カバーアート級の表現
- 図全体のトンマナ設計
- 情報の優先順位整理
などです。
ここでは、単に「描けること」ではなく、
- 何を削るか
- 何を強調するか
- 研究構造をどう翻訳するか
という“伝達設計”が重要になります。
AI時代に重要なのは「描けること」より「整理できること」
AI時代になり、「画像を作ること」自体のハードルは下がりました。
しかし一方で、
- 情報過多
- 構造破綻
- 解剖不整合
- 主張の曖昧化
といった問題も増えています。
だからこそ今重要なのは、
「描けるかどうか」
ではなく、
「研究内容を整理できるかどうか」
です。
自作・AI・プロ依頼は、対立するものではありません。
研究内容やFigureの役割に応じて、適切な方法を選択することが重要です。
まとめ
小野真平先生の記事は、「医師が安全に自作できるライン」を非常に分かりやすく示した優れた取り組みです。
そして、そのラインが明確になるほど、
- どこまで自作できるか
- AIがどこまで役立つか
- どこからプロが必要か
も自然と見えてきます。
MEDICAL FIG.では、研究内容の整理や構造設計を含めたFigure制作支援を行っています。
「AIではまとまらない」
「図として整理しきれない」
「研究の価値をもっと伝えたい」
と感じた際は、お気軽にご相談ください。
【参考】 「自作・AI・プロ」の境界線(早見表)
|
目的
|
自作
|
AI
|
プロ
|
|
単純な概念の視覚化
|
◎
|
△
|
ー
|
|
手技の簡易説明
|
○
|
△
|
◎
|
|
疾患メカニズムの整理
|
△
|
△
|
◎
|
|
査読対応(精密解剖)
|
×
|
×
|
◎
|
|
Grant図・カバーアート
|
×
|
×
|
◎
|



