論文で地図を使用する際に知っておきたい著作権のこと

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医学論文専門Figureデザインサービスの『MEDICAL FIG.』編集部です。
医学論文では、調査したデータの分布等を示すために地図を活用することがあります。

海外の論文投稿誌に調査情報を示す際に、日本地図を示す事例があります。
『MEDICAL FIG.』へのご相談で多いのは、論文投稿者ご自身がオンラインの無料白地図素材を活用しパワーポイント等で作成したデータを、論文投稿に際してブラッシュアップしたいというケースです。
さて、論文投稿者が利用した白地図データをそのまま活用して良いものでしょうか?

当然ですが、地図も著作権が生じます。
フリーで白地図を配布するサイトでは、既存の地図をトレースした可能性が否定できないため、仮に当該白地図を利用した場合、既存の地図の著作権との間で抵触するリスクがあります。
フリーの白地図の二次利用について運営者に確認をしても二次利用の責任を完全に免れるわけではありません。
現実的に(事実上)著作権侵害として訴えられる可能性は低いと思われますが、万が一を考えると、権利関係が不明なフリー素材の使用は避けた方が良いでしょう。
では、どうすればいいのでしょうか?

結論!!日本地図は国土地理院のデータを使ってください。

出典が明らかではない地図ではなく、出典が明らかな国土地理院のものを利用することをお勧めします。
国土地理院の地図はあらゆる場面で利用ができますので、【地図の利用手続パンフレット】をご覧ください。
『MEDICAL FIG.』では、論文投稿者から受け取ったデータを元に、国土地理院の地図から再トレースを行っています。
ちなみに、表現したいデータの種類によって地図の縮尺が変わります。実際のところ、縮尺によって海岸線が変わるため、すべての地図はトレースしなおすことになります。
作成したFigureの権利関係としては、地図の著作権は国土地理院、編集著作権および二次著作権は加工したもの(例『MEDICAL FIG.』)が保有します。
ジャーナルへの投稿時には必ず出典を記載します。この場合は著作権者である国土地理院の記載のみでOKです。
上述の国土地理院のパンフレットには出典の記載方法も明記されていますが、残念なことに出典の記載方法が日本語表記のみなのです。
海外ジャーナルに投稿する際には、どう記載していいのか困りますよね。

 

国土地理院の引用記載例 英語表記版(公式回答)

英語表記について、国土地理院から公式回答としていただきました。
以下の用例をご活用ください。
あくまで公式での一例ですので、加工方法に合わせ適宜変更も可能です。

1「出典:国土地理院発行2.5万分1地形図」
Source: the 1:25,000 Topographic Map by Geospatial Information Authority of Japan

2「出典:国土地理院撮影の空中写真(XXXX年撮影)」
Source: the Aerial Photograph by Geospatial Information Authority of Japan(XXXX)

3「電子地形図25000(国土地理院)を加工して作成」
Created by editing the Digital Topographic Map 25000 of Geospatial Information Authority of Japan

4「地理院タイルに○○を追記して掲載」
Posted with data appended to the GSI Tiles

 

さて、日本地図は良いけれど、世界地図はどうなるの?という疑問が出てきます。
作成した国がベルヌ条約や万国著作権条約の加盟国(日本含む)であれば、著作権保護期間以外は基本的にその著作物は日本においても著作権として保護されることになるため当該条約加盟国上万国共通の保護を受けることになります。
現実的に(事実上)、医学論文のデータ分布のFigureでの地図利用で著作権侵害として訴えられる可能性は低いと思うというのが、当社顧問弁護士事務所の見解です。
むしろ気を付けるべきは、他の論文の同様の地図データの盗用と疑われないようにすることかもしれません。
『MEDICAL FIG.』では、引き続き世界地図における対応も検討していきます。

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